発売日:2018/12/7
【制作】2018年
【著者】チョ・ナムジュ
【ページ数】192ページ
【サイズ】19 x 13.1 x 1.5 cm
【販売元】筑摩書房
<収録内容>
ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかの様子のキム・ジヨン。
誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児……キム・ジヨン(韓国における82年生まれに最も多い名前)の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。
「キム・ジヨン氏に初めて異常な症状が見られたのは九月八日のことである。(……)チョン・デヒョン氏がトーストと牛乳の朝食をとっていると、キム・ジヨン氏が突然ベランダの方に行って窓を開けた。日差しは十分に明るく、まぶしいほどだったったが、窓を開けると冷気が食卓のあたりまで入り込んできた。キム・ジヨン氏は肩を震わせて食卓に戻ってくると、こう言った」(本書p.7 より)
「『82年生まれ、キム・ジヨン』は変わった小説だ。一人の患者のカルテという形で展開された、一冊まるごと問題提起の書である。カルテではあるが、処方箋はない。そのことがかえって、読者に強く思考を促す。
小説らしくない小説だともいえる。文芸とジャーナリズムの両方に足をつけている点が特徴だ。きわめてリーダブルな文体、等身大のヒロイン、ごく身近なエピソード。統計数値や歴史的背景の説明が挿入されて副読本のようでもある。」(訳者あとがきより)
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次から次に積み上げられる不条理を前に、思わずもっと楽しんで生きようよ、と言ってしまいたくなる人もいるだろう。だから私はあえて言いたい。
「これが私たちの日常だけど、なにか?」、と。
――鳥飼茜
この本のノンフィクション的書法での女性差別への抗議は一歩先に行ってる。良きベストセラーが国を動かすケースだ。
――いとうせいこう(twitterより)
たくさんの私たちに本の中で出会い、時々胸が詰まる思いでした。
――伊藤詩織
一気に読んだ。登場人物が、理不尽さに甘んじることなく、自らの手で成功を掴んでいく様子は痛快だ。
それにしても驚くのは、これが百年前ではなく、現代の物語ということ。
もちろん日本も他人事ではない。哀しみと同時に、勇気をもらえる小説だと思う。
――古市憲寿
フェミニズムって、実は学問でも思想でもなく、女性たちの日常の中にある。それは生きるものであり、暮らすものだ。
ということを小説にしたからこんなにパワフルなんだと思う。日本のキム・ジヨンも読みたくなった。
――ブレイディみかこ
女であるということ。たったそれだけで、そのせいで、被らなければならなかった無数の悲しみ、それらを耐えなければと繰り返しこらえ続けた狂おしさが……
実は、自分だけのものではなかった、と思えたなら、それだけでもたぶん救いになるんだ。救われるべき人たちに届きますように。
――温又柔
小説は語れなかった名もなき感情に言葉を与えることができる。だから、韓国中の女性たちがこの本に熱狂したのだ。
自分の中の言葉にならなかった、声に出せなかった感情が、ここにすべて書かれているから。
――星野智幸(「ちくま」2019年1月号書評より)
つらかった。出来事も感情もわかりすぎてきつかった。女性を取り巻く状況はそう簡単には変わらないだろう。
それでも勇気をもって書かれ、刊行された本がここにある。このスタートラインに立って走ろう。一緒に。
――深緑野分